第80回定期大会特集
2025年5月24日(土)、京都府立高教組第80回定期大会が京都教育文化センターで開催され、運動総括・方針などの全議案が満場一致で採択されました。
大会は、近江委員長の開会挨拶、来賓・他団体からの連帯挨拶のあと、代議員20名による活発な討論がなされ、教育現場を取り巻く厳しい現状、教職員の多忙化、非正規雇用の問題、人権・平和教育の重要性、そして組合活動を通じた現状打開への強 い意志が示されました。
このように定期大会では、厳しい教育環境の中で奮闘する教職員の現状を共有し、労働条件の改善、人権・平和教育の推進、そして組合活動の強化を通じてより良い教育現場を実現していくための決意を新たにする場となり、提起された様々な課題に対し、今後も組合として粘り強く取り組みを進めていく方針が確認されました。
なお、昼食休憩時間には、ALTの民間派遣問題、高齢期雇用、介護子育てジェンダー平等、高校教育での要求交流会が行われました。

近江委員長のあいさつ

おはようございます。執行部を代表し、一言ご挨拶を申し上げます。
今年は戦後被爆80年の節目の年であるとともに、天下の悪法・治安維持法制定百年の年でもあります。この悪法によって、学問の自由や大学の自治が侵され、日本は戦争への道を突き進みました。現在、学術会議法案が国会で審議されています。これは学術会議解体法案とでも呼ぶべきもので、政府が学問に介入し、異なる意見を排除しようとするもので、日本の歴史を百年前に戻し、新しい戦争に突き進もうとしているのではないかと疑いを持たざるを得ません。
京都でも経ケ崎、舞鶴、祝園に見られるように、各地で米軍や自衛隊基地が増強され、北から南まで軍事要塞となりつつあると言っても過言ではありません。そうした中で、京都選出の西田参議院議員が先日、ひめゆり平和記念資料館の展示について歴史が書き換えられているという発言をしたことは記憶に目新しいことと思います。世界では、ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルによるガザへの無差別攻撃により、多くの人命が奪われ、日常生活が破壊されています。
子どもも教職員も学校と社会の閉塞感に苦しめられ、悲鳴を上げています。その背景には、この30年間続けられてきた効率優先、競争万能の新自由主義的な政策であり、それが効率優先であってはならない子どもの成長と教育に大きな歪みをもたらしているのだと知らざるを得ません。
そんななか、中高生の積極的な動きも起こっています。一つは、宇治市の中学三年生の校則にまつわる市議会請願です。さまざまな立場の生徒を交えてのルールづくりや、生徒が自主的に行動できる雰囲気を作ることなどを市議会に請願しました。かれらはを私の学校だけが変わっても意味がないし。他の子どもにも意見を言っていいんだということを伝えたかったと語っています。また、高校生たちが18歳未満の選挙運動を禁止する公選法の規定は表現の地位を保障する憲法に反するとして東京地裁に提訴しました。かれらは選挙で選ばれるのは私たちの代表である以上、18歳未満の人の声を排除するものであってはいけないと語り、自分たちはこの街をつくる一員ではないと言われているようだと訴えました。
京都の高校、障害学校でも臨時異動やハラスメントの相談で府高が頼られ、大幅賃上げや仕事と子育て両立、正規職、教職員も処遇改善に向けて交渉をするなど組合が力を発揮しています。教育という仕事の素晴らしさは、よりよい未来、そして、自分を作るために子どもたちと一緒に取り組み、ともに成長することができることです。今、私たち自身が組合の存在と可能性に確信を持つことが必要です。教育という仕事の素晴らしさは、よりよい未来、そして、自分を作るために子どもたちと一緒に取り組み、ともに成長することができることです。今国会で審議されている級特法改正法案の問題点を明らかにし、子どもの教育の充実と教職員が働き続けられる真の改革の実現を目指し、職場、地域とともに頑張りましょう。私もこの一年、仲間を増やし、学校と社会をよりよくするために奮闘する決意を表明し、開会の挨拶とします。
来賓あいさつ
全教 金井書記長
皆さん、定期大会おめでとうございます。
今、教育の働き方に関わる教特法改定法案が国会で審議中です。私たちは廃案を掲げ運動してきました。皆さんの運動のおかげで、修正案に教員定数増などが盛り込まれました。しかし内容は全く不十分で、政治には教育予算増や当事者軽視など限界があります。根本的な政治の転換が必要です。
子どもたちの豊かな成長を保障するため、組合の存在を知らせ、要求実現を呼びかけましょう。憲法、ジェンダー平等、子どもの権利条約が生きる教育社会の実現を目指し、取り組みを一層広げ1、組合を強化し仲間を増やしていきましょう。共に頑張りましょう!
府高サポーターズクラブ(北部)
大西克己事務局長
私たちの会は今年で7年目になり、皆さんの活動を情報誌などで伝えています。OBにとって府高と仲間は教職人生の宝です。皆さんも、きっとそうなるとおもいます。
ふたつのことを伝えたいと思います。まず、府高は自分のためにあるということです。要求実現のためにどんどん組合を活用し、本部を頼ってください。次は大変な今こそピンチはチャンス、新たな活動スタイルを確立する時と考えてください。私たちはいつもみなさんの活動から元気をもらっています。仲間を広げ、粘り強く頑張ってください
京教組 菱山書記長
本年度から書記長になりました。よろしくお願いします。
万博で子どもも先生も疲弊しています。能登の復興を忘れてはなりません。私たちの働き方に関わる教特法改正は問題です。教職調整額に差をつけたり、主務教諭を新設したりするのは職員の分断を招きます。文科委員会を傍聴し、政治を変えなければと強く感じました。私たちの声を真剣に聞いてくれる議員を国会に送りましょう。
府高の皆さんの活動は勉強になり、展望を感じます。拡大がすべてだと思ってます。京都の先生として、何が何でも組合員を増やしたい。課題は山積ですが、大会で活発な議論を期待しています。ぜひお力をお貸しください。共に頑張りましょう!
日本共産党 島田敬子府議
定期大会、おめでとうございます。子どもたちに寄り添う教育実践に奮闘されている皆さんに心から感謝しています。
働き方に関わる教特法改正案が衆議院を通過しましたが、残業代ゼロの枠組みが温存され、長時間労働を助長しかねません。先生方の「命を削って働いている、もう限界」という切実な声を聞くと、本当に何としても変えたいと思います。私たちは残業代支払い制度導入を求め、国会、府議会、市議会と連携して取り組みます。教育委員会にも国へ言ってほしいと要求しました。
府議会でも、教員定数増、支援未配置解消、高校制度改革など、皆さんの当たり前の声を実現するために頑張っています。皆さんの輝くお顔を見て安心しました。子どもたちに行き届いた教育実現のために、共に頑張りましょう!
京都高校生平和ゼミナール
Y君(府立高校1年)
府立高校1年生のYです。京都高校生平和セミナー代表をして発言します。
東京にいき、外務省で質問の機会を得ましたが、核抑止論の話ばかりで、被爆国の政府かと疑問でした。勉強しろと言われ悲しかったです。私たちは学んでいます。
希望もありました。渋谷のパレードでは多くの人が応援してくれましたし、全国から67名の高校生が集まりました。外務省要請報告書も作り、広めています。
私たち高校生平和セミナーが未来へ続くためには、皆さんの力が必要です。教職員と生徒でスクラムを組み、平和な未来を作りましょう!ご協力お願いします!
Aさん(府立高校ALT)
京都府の高校でALTとして働いています。
私たちの契約は、派遣会社の入札で決まります。そのため、雇用の安定が全くありません。同じ学校で同じ仕事を3年続けていますが、派遣会社は毎年変わりました。そのため毎年就職活動が必要で、契約内容や条件も悪化し、給料も下がる一方です。同じ仕事なのに、年々生活が厳しくなる現状です。家族も、健康保険の手続きなどで困惑しています。
派遣会社の多くは私たちを教育の一員ではなく、商品のように扱っていると感じます。教育の質よりもコスト削減が優先されているように思えてなりません。賃金のおよそ3分の1を派遣会社が中間搾取しているのです。サポートは少なく、利益だけを得ているように感じます。
子どもたちの教育を本当に大切に考えるなら、なぜ教育を担う私たちを不安定な立場に置くのでしょうか?私たちは教育の一員として、安定した立場で尊厳を持って働けることを望んでいます。それが子どもたちの教育の質を守るためにも必要です。私たちALTの現状に目を向け、京都府教委が直接雇用の形を取るよう、皆さんのお力をお貸しください
こんなことが話されました。
(1) 教育環境と生徒支援の課題
① 教育環境整備の課題
向日が丘支援学校の校舎移転と寄宿舎閉鎖後の課題が提起されました。「教育環境や緊急入舎のこと、生活実習室に寄宿舎の生活教育がどう生かされるかなど同校の課題を障教部の課題として運動を進めていく。」といった発言があました。また非正規職員の割合の高さや、宿直勤務における代替配置の制度化が求められているといった課題も出されました。
②「させられる教育」からの脱却
特色ある学校づくりの名の下での多忙化、生徒の実態に合わない教育への懸念が示されました。「『生徒の実態に合わせた教育』を進めるため、職場で積極的に話し、コミュニケーションをとることにより、教職員の声を大きくしていくことが大切だ。」といった発言がなされ、教職員全体での学校づくりへの参加が強調されました。
③分会がなかったり、少人数分会のかかえる問題
分会がない学校における教職員の孤立や、生徒支援における課題が報告されました。「生徒も教師も、何を言っても仕方がないとあきらめている感じ。」「日々の疑問や小さな違和感が積もって大きなストレスに。何が教育的な対応なのか?話し合う相手がない、これが『分会がない』ということかと思う。」といった厳しい現状がはなされ、分会活動の重要性が改めて認識されました。
④定時制における外国籍生徒への対応
市内の定時制からは外国ルーツの生徒が増加し、「今年度はやむを得ず、学校設定科目『日本語』をカリキュラムに加える事態となった。」といった現状が報告されました。高校再編計画と関連付け、より良い教育条件整備が求められています。

(3)人権・平和と多様性の尊重
①原水爆禁止世界大会と平和教育
被爆80年の節目に開催される原水禁世界大会への参加や、職場での折り鶴の取り組みが報告されました。「『平和を願う』という思いが普遍的に受け入れられるということも実践から確信が得られた。」という発言がある一方、「戦争が引き起こされるメカニズム、大衆が戦争を支持してしまうのはなぜかといったことも学び、教えていきたい。」など高校教育における平和教育のカリキュラム構築の必要性が提起されました。
②ジェンダー平等推進
ジェンダー平等推進会議の立ち上げが報告され、育児・介護・病気等の課題に直面しても働き続けられる職場の実現を目指す取り組みを進めることが確認されました。また、療育休暇の取得対象化に向けた交渉の継続も表明さました。
③政治参加の重要性
「軍事費が教育予算の2倍。拡大する軍事費があれば教育に回してほしい。」と軍事費の拡大に対する教育予算の削減への懸念や、物価高の中での学校給食の現状が語られ、そのなかで教職員の政治参加の意義が強調されました。


(2) 労働条件と働き方の改善
①寄宿舎における雇用と労働条件
採用試験が実施されても非正規職員の割合が5割を超える寄宿舎があり、受験年齢制限の撤廃や、子育て・病気休暇明けの宿直勤務免除のための代替配置制度化が求められています。
②公務災害申請とハラスメント問題
同僚からのパワハラによる休職、公務災害申請検討中の事例が報告されました。「これからも『おかしいことはおかしい』と声を上げ続けたい。」との報告があり、組合としてハラスメント問題への対応を進める姿勢が示されました。
③メンタルヘルスと労働安全衛生
青年層から中堅層にかけてメンタル疾患による休職者が増加傾向にあり、その要因として多忙化やハラスメントがあげられました。またプレハブ校舎の室温問題や超勤による過労死ラインに到達している者の多さなど、労働安全衛生への取り組みの重要性が強調され、「命を守るための最重要課題として、各分会で取り組みたい。」との発言がありました。
④給与(地域手当)の格差
京都市と北部地域における地域手当の格差に対する不満が表明されました。「京都市と北部では、新採で年間24万円の差が出ている。」「若い先生の中には、北部勤務は『ペナルティ』と感じる人もいる。」との発言があり、教育労働者の職務にふさわしい賃金と地域手当の是正が要求されました。⑤時間外勤務の実態と36協定: 事務職員部の活動報告の中で、臨時教職員の待遇改善とともに、非常勤職員の時間外勤務に対する36協定に基づく対応(働かせないもしくは支払う)が求められました。

(4)組合活動の強化と組織拡大
①分会活動の取り組み
全員が講師という分会における組合員加入の働きかけ、分会ニュースの発行を通じた組合活動の周知、未組織職員への原稿依頼などが報告されました。とくに「教職員の中にも分会活動を知らない人が多い。」といった指摘は重要です。
②事務職員部と司書委員会の活動
各種研究大会への参加やレポート発表、組織拡大に向けた京教組事務職員部との連携、臨時教職員の待遇改善に向けた交渉など、事務職員部の活動が報告されました。また学校図書館司書の採用試験受験資格引き上げの要求や、司書本来の業務以外の負担増、昇任昇格の課題などが提起されました。
③組合加入への働きかけ
「自分には初めての経験だった。」「恩返しのつもりで取り組んだ。」という人事異動期における職場での組合加入の働きかけの経験が語られました。
執行部による討議のまとめ
荒瀬副委員長 討議のまとめ
討議のまとめを行います。20本の討論、ありがとうございました。四点ぐらいのことをしゃべりたいというふうに思います。
教職員の尊厳を取り戻したい
一つ目は、「失った教職員の尊厳を取り戻してほしい」「取り戻したいんだ」という発言が相次いだと思っています。学職部からの「なぜこのような惨めな思いをしなければならないのか」というご発言。それからAさんの公務災害認定申請の取り組み、討論ではないんですがALTの先生たちの置かれている状況、こういった発言からは、教育にたずさわる一員として、正当に扱われたいという要求が示されていました。
私は昼食交流会で高齢者雇用の所に出させていただきましたが、定年退職を迎えて以降も教育に尽力しているにもかかわらず、賃金とか待遇も含めた配慮がなされず、尊厳がないがしろにされているような状況があります。裏を返せば、やっぱり尊厳を取り戻したいなという要求があると考えました。
「させられる教育」からの脱却
二つ目は、上から言われる仕事、何も考えず「させられる教育」、高校での特色づくりや入試説明会など、そういったところに先生方が動員され、管理教育の中で自分の主体性を発揮していくことが困難になっているという課題が出されました。これも裏を返せば、実は教師として自由に主体性を発揮して働きたいんだという願いがあると思いました。こうした「させられる教育」のなかで教職員を働かせていることが子供にも影響しているとおもいました。
「成長したい」という願いに寄り添いたい
とくにB高校の話には驚きました。自分の行ってる学校を
「ゴミ箱」と表現するなど、子どもたちを劣等感の塊にさせて
いる。それをあたかも自己責任であるかのように、子供たちや
先生に感じさせる状況がありました。
私は障害児関係校で働いているんですが、「できない」って
思ったり、いったりしている子も、やはりできるようになり
たいっていう願いを持っています。「もっとより良い自分になり
たい」と思って毎日生きていると思っています。
そしてそうした願いをこう膨らませるような教育と教育条件を
作っていきたいんだと思っています。
そういう要求が、それぞれの先生方のご発言の中にあったと思っ
ています。
インクルーシブ教育のための条件整備
またC高校定時制の外国籍生徒の問題、面接選考でも落とさざるを得なかったという話をも含めも、こどもたちの願いを実現する教育とはなにかを考えてしまいます。自分は、イングルーシブ教育づくりを進めていまが、改めて通常学校の先生と支援学校の先生が一緒になって、インクルーシブとはそもそも何なのだとか、それを実現するために必要な条件整備、とくに通常学校における条件整備って何なんだ?みたいなことを話していかなければならないなというふうなことを感じました。
政治革新の願い
三つめは、そうした発言の背景にある先生たちの働き方に
かかわって、政治革新への願いがあります。現場の中で頑張
って働いている。物価高騰もある。そういう中で、やっぱり
こう政治を変える、そういうことで教育を変えていきたいん
だっていうふうな話がありました。
軍事費に8兆円使っているのも現在の政治ですし、わずかな
エアコン代にチクチク言ってくるのも政治にかかわっています。
参議院選挙が7月にあります。多くの発言の背景には政治変革、
政治革新の要求があると抑えておきたいと思っています。
対話を粘り強くつづけること
4つ目は組織の拡大強化ということです。
D代議員から「七打数一安打」という話がありました。自分自身が先生の年齢になってもそういう取り組みを続けられるだろうか、今も最前線でたたかっておられる背中を見ながら、まだまだ自分はあの頑張らないといけないなっていうふうに、発破をかけられたという思いです。「組合加入に至らないかもしれなくとも、対話を粘り強く続けながら、職場の矛盾とたたかいたい」という発言などにもすごく励まされました。
E代議員の「この人と一緒に頑張りたい」という願いで組合加入を呼びかけたという話は、毎日の対話とか、地道にそういう取り組みを続けることの大切さを学びました。それに希望を持ちたいなと思います。
私たちはどんな背中を見せるのか
最後に、私たちはどんな背中を見せるかが
問われていると思います。
家族にたいしてもそうですし、高校生、小中学部
の障害のある子どもたち、彼ら彼女らにどういう
背中を見せられるのか。教師というのが一番身近に
いる仕事をしている大人です。
どういう顔で、どういうふうに仕事に向き合って
いるのかが子供たちに影響を与えます。平和教育の
ことにしても、政治的な問題に関しても、どういうふうに向き合っていくの
か、子供たちから、保護者・地域の人たちに、どういう背中を見せているかは、僕たちの大事な役割なんだろうなと、みなさんのご発言から感じました。
まとまりませんが、これで討論のまとめとします。ありがとうございます。
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